前回は、両方の区画で虎紋が表現される羽目板部を持つ2間巾の石造連子窓型蕃塀について、全2事例を紹介した。これをもう少し詳しく検討していきたい。
虎紋は尾が長く体躯が縞状となっていることから、獅子紋とは明瞭に区別できる。2事例とも岩上に左向きに立ち、背景に竹が表現されている。左側の虎紋は首を右に向けた吽形、右側の虎紋はまっすぐ左方向を見据えた阿形である。2事例とも紋様構成や細部の表現がよく似ていることが分かる。実際に作者は両者とも名古屋市西区八坂町の石工角田六三郎である。
製作年に着目すると、1926年に北名古屋市西之保喰守社、1928年に稲沢市桜木宮前八坂社の順に製作されていることが分かる。両方の区画で虎紋が表現される羽目板部を持つ2間巾の石造連子窓型蕃塀は1920年代後半に角田六三郎によって集中的に製作されたことが明らかとなった。