蕃塀(ばんぺい)にこだわったブログです。蕃塀は神社の拝殿の前にある衝立状の塀です。
by banbeimania
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稲沢市船橋町熊野神社の蕃塀

 稲沢市船橋町市場に所在する熊野神社については、創建年代など詳細は不明である。『寛文村々覚書』や『尾張徇行記』には熊野神社の記述は認められない。祭神は社名からみて応神天皇と推察される。

 船橋熊野神社の蕃塀は、1間巾?の石造連子窓型蕃塀で、大きさは概略で本体長約2.6m、全高約2.3m、屋根長約3.4m、屋根巾約0.7mを測り、両側には控え柱を持たない。(2007年10月25日時点では私の調査上の不手際で大きさは測定できていなかった。その後改めて参拝し測定し2009年6月13日加筆修正した。)

 詳細の構造は次の通り。基礎は土砂に埋もれて詳細の構造は不明であるが、コンクリート製基壇上に直接円柱を2本立てて屋根を載せているようにみえた。円柱の内側には下から貫、羽目板部、貫、連子窓部、貫の順に材を積み重ねていて、透かし部を持たない。羽目板部は5枚の石製縦羽目板が挟み込まれ、表面は羽目板全体に飛翔する5羽の鳥に波涛紋が彫刻されていた。中央の羽目板裏面には「大正九年一月  寄附者 (人名2名分)」右端の羽目板裏面には「石工 ナゴヤ西区八坂町 角田六三郎」と刻まれていた。連子窓部は、4本の角柱と3枚の幅広い石板を交互に立てて造られていて、これまでには見られない珍しい形状である。石板には亀甲紋に「大」字紋が描かれている。円柱上位に雲形腕木を模した張り出しが前後にあり、屋根は切妻状に切り出された反りを持つ屋根で、大棟の両端には鬼板が配置されていた。

 船橋熊野神社は、正面から灯籠、鳥居、蕃塀、壁の無い吹き抜けの妻入拝殿、灯籠、狛犬から基壇上の本殿施設群(祭文殿や本殿)に至る構成を持つ。

 船橋熊野神社の蕃塀は、大正9年(1920)1月に名古屋市西区八坂町の石工角田六三郎によって製作されたものである。石工角田六三郎には多くの蕃塀の作品があるが、本蕃塀は形状が極めて特異であった。
 過去(本ブログ2007年8月1日条「愛西市の蕃塀(その2)」)に、愛西市には通常の石造連子窓型蕃塀と異なる蕃塀が数例あり、これを4つのタイプに整理したことがある。船橋熊野神社の蕃塀は、その中でも、透かし部が簡略化され連子窓の角支柱を平行に置き切妻屋根となる「A葛木八龍社タイプ」に比較的近い形態である。ただし、A葛木八龍社タイプと大きく異なる点は、幅広い石板を用いる連子窓の形であり、その意味では新たにカテゴリーを増やした方が良いかも知れない。
 透かし部の双龍紋が美しいのが特徴であった角田六三郎作の蕃塀に比べれば、この事例は奇異な感じがする。ただし、本蕃塀は大正9年1月に製作されており、今のところ角田六三郎の蕃塀の中で最も古い作品といえる。双龍紋の透かし部を持つ定型化した蕃塀が成立する以前の角田六三郎作品と評価すれば、船橋熊野神社の蕃塀は、石造連子窓型蕃塀が定型化する前の揺籃期の様相を示す事例として、その資料的価値は高いと思われる。
e0113570_22564216.jpg

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by banbeimania | 2007-10-25 22:58 | 蕃塀の事例 | Comments(0)
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