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一宮市三条御裳神社の蕃塀
これからは平成の大合併で一宮市となった旧尾西市に所在する蕃塀の紹介を行うこととする。はじめに御裳神社の蕃塀を紹介したい。
一宮市三条字宮西に所在する御裳神社は、寛徳2年(1045)に創建された古社で、『尾張国神名帳』に従三位上御母天神と記された神社である。当地は御母板倉御厨の地であり、古来より盛んであった織物業・染色業の守護神として崇敬を集め、社名を御裳神社と定められた。祭神は天照大神・日本武尊・迦具土神である。 御裳神社の蕃塀は、1間巾の石造連子窓型蕃塀で、大きさは概略で本体長約2.5m、全高約2.1m、屋根長約2.8m、屋根巾約0.4mを測り、両側には控え柱を持たない。 詳細の構造は次の通り。基壇を持たず砂利敷きの地面に直接角柱を2本立ててその上に屋根石を載せる。なお、角柱の基礎は砂利に埋もれてしまっていて本来の構造は不明な状態である。角柱の内側には下から地貫、羽目板部、腰貫、連子窓部、欄間部(内法貫)の順に材を積み重ねている。羽目板部は束柱を持たず、石材による縦羽目板が6枚嵌め込まれていて、その表裏両面とも何も装飾や加工は施されていない。右側角柱の外面には「大正元年十二月」、左側角柱の外面には「寄附人 (人名1名分)」の文字が刻まれていた。欄間部は内法貫と一体化した一枚板が用いられており透かし状にはなっていない。ただしこの一枚板は他の部材に比べ風化の度合いが低く、後に改修された可能性が考えられる。角柱柱頭に腕木板はなく、連子窓部は金属製棒が多数嵌め込まれ竪連子に造られていた。この金属製棒も状態から見て後に改修された可能性がある。屋根は切妻状に切り出された直線屋根で、上部に載せた棟木石の両端は外側に大きく突き出ている。控え柱は存在しないが、倒壊防止のために主柱である角柱に石製角材が斜めに宛てがわれ補強されている。 御裳神社は、正面から一の鳥居、灯籠、二の鳥居、灯籠群、蕃塀、狛犬から基壇上の平入拝殿や祭文殿や本殿などに至る構成を持つ。 御裳神社の蕃塀は、大正元年(1912)12月に製作されたものだが、作者は不明である。明治三十七八年戦役(1904〜1905)記念で製作された一宮市千秋小山神明社の蕃塀を除くと、本蕃塀がこれまで紹介してきた蕃塀の中で最古の石造連子窓型蕃塀となる。本蕃塀は、1)角柱を主柱とし、2)金属棒で竪連子を造り、3)石製縦羽目板を嵌め込み、4)屋根が切妻の直線屋根であることなどが特徴である。こうした特徴が、古い石造連子窓型蕃塀に多く見られるものと思われる。御裳神社の蕃塀は、初期の石造蕃塀を検討する上で基準となる事例のように感じられる。
by banbeimania
| 2008-06-23 22:11
| 蕃塀の事例
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